2013年4月17日水曜日

Ni-MH充電器の製作(3)


今回は、DC-DCコンバータ部回路の定数を決めて行きます。


3、回路検討

前回考えた試作回路に、以下訂正したものを示します。

※訂正箇所:R16下端がCHG-端子にあったものを、GNDに移動

この回路をたたき台として、定数を詰めて行きます。




3.1 入力電圧(VCC)、電流検出抵抗

DC-DCコンバータにおいて、依存する要素が多い、入力電圧(VCC)を決定します。

・VCC = (四本時の終止電圧)+(電流検出抵抗の電圧)+(Q13・D12aの損失)

四本時の終止電圧は、1.4 × 4 = 5.6V です。
Q13・D12aの損失は、1V程度をみておきます。
電流検出抵抗の電圧は、まず、その抵抗値を決める必要があります。

AVRのADコンバータの内部基準電圧の使用を仮定すると、その上限は、Vref = 2.1V となります。

充電電流の最大値230mAのとき、抵抗値は、2.1V / 230mA = 9.13Ω 以下である必要があります。
逆に、充電電流の最小値75mAのとき、極端に検出電圧が低いと、ノイズに弱くなる恐れがあります。
今回、0.2V程度を限界とすると、0.2V / 75mA = 2.67Ω 以上となります。

ここでは中間値で、一般値をとって、

R17 = 4.7Ω

にしておきます。

これより、必要な入力電圧は、

・VCC = 5.6V + (4.7Ω× 230mA) + 1V = 7.68V

ここでは、AC6Vを整流すると、6V × 1.4 = 8.4V が得られるので、

VCC = 8.4V

にしておきます。


3.2 電圧検出抵抗

Vsense端子の電圧が、ADコンバータの基準電圧 Vref = 2.1V 以下の必要があり、また、ADコンバータの入力抵抗10kΩに対して、十分低い必要があります。

電池四本時の最高電圧が、1.4V × 4 = 5.6V なので、

・R15 : R16 = (5.6V - 2.1V) : 2.1V = 1.67 : 1

R15が、R16の1.67倍以上あり、10kΩより十分小さければ良いので、ここでは、

∴R15 = 1kΩ
∴R16 = 470Ω

にしておきます。

※ただし、この抵抗は、無負荷時のアイドル電流を流すための抵抗を兼用できますので、ここでは仮決めとして、次回カット&トライで再決定します。


3.3 コイル(インダクタ)

DC-DCコンバータで、最も重要な要素です。
算出原理は、ABCDEFGさまの降圧型DC-DCコンバータに関するサイトを参考にしました。

まず、仮に「連続モード」であるとして、Lの値を算出します。
Lの値は、上記サイトの式(1)を変形して算出します。

・L = (Vi-Vo)×Ton / ⊿I

(1)⊿I(max)が最小のとき

・Vo = (単4一本時の最小電圧)+(電流検出抵抗の電圧) = 1.0V + (4.7Ω×75mA) = 1.35V

・Ton = Tpwm × (Vo / Vi)

Tpwmは、AVRのPWM周期なので、1 / 32kHz = 31.25us にします。

よって、Ton = 31.25us × (1.35V / 8.4V) = 5.02us

・L(@75mA) = (8.4V - 1.35V) × 5.02us / 75mA = 472uH

(2)⊿I(max)が最大のとき

・Vo = (単3四本時の最小電圧)+(電流検出抵抗の電圧) = 4.0V + (4.7Ω×240mA) = 5.13V

・Ton = 31.25us × (5.13V / 8.4V) = 19.1us

・L(@240mA) = (8.4V - 5.13V) × 19.1us / 240mA = 260uH

通常動作で、「連続モード」であるか確認します。
同様に、ABCDEFGさまの動作モードに関するサイトを参考にします。

上記サイトの式(23)を変形すると、

・Lmin = 0.125 × (Vimax / Iomin) / f = 0.125 × (8.4 / 75mA) / 32kHz = 437.5uH

よって、472uHに近い、一般値を採用します。

∴L11 = 470uH

合わせて、コイルの定格電流を求めておきます。

・Imax = ⊿I(max) + Io = 240mA + 240mA = 480mA

よって、定格電流0.5A以上のものを選びます。


3.4 出力コンデンサ

出力コンデンサC12には、以下値のリップル電流が流れます。

・|Iripple| = (Vi - Vo) × Ton / L または Vo × Toff / L

この値は、コイルに流れる⊿Iの最大値そのものです。

よって、リップル電流が240mAを許容するコンデンサが必要となります。
ここでは、手持ちに「日本ケミコン製KZHシリーズ」1000uF 16V耐圧のものがあり、リップル電流が1410mAだったので、ちょっと良過ぎますが、本品の値を採用しておきます。

また、コンデンサのインピーダンスにリップル電流を掛けたものが、出力に現れるリップル電圧となります。
本品のインピーダンスは、0.11Ω(-10℃)だったので、

・|Vripple| = 240mA × 0.11Ω = 2.64mV

となり、特に問題なくOKとします。

∴C12 = 1000uF


3.5 Q13ゲート抵抗・Q12ベース抵抗

Q13のゲートを直結でスイッチングすると、ゲート容量の影響でリンギングが発生します。これはスイッチングの重大な誤動作を招くので、抵抗を挿入して抑制する必要があります。
これはカット&トライが必要なため、仮に10Ωにしておき、実験で決定します。

次にQ12のベース抵抗ですが、あまり大きいとQ12が十分にオンせずに、Q13のゲート電荷を吐き出せなくなります。逆に小さすぎると、ドライバQ11の負担が大きくなると同時に、無駄な電流を流し続けることになります。
これもカット&トライが必要なので、仮に4.7kΩにしておき、実験で決定します。


ここまでの定数を反映した回路を、以下に示します。




今回は、計算ばかりで申訳ありませんでした・・・


次回の予定

次回は、上記回路を仮組みして、実験を行います。
予告代わりに、実験開始直後の画像を掲載します。


※回路図とは異なり、実験用にバー表示LEDを実装して、ADコンバータの出力値10ビットを表示させています。