2015年8月22日土曜日

エフェクター(オーバードライブ)の製作


バンド活動の必需品とも言える「エフェクター」を製作します。
「エフェクター」は、一般的なアナログ電子回路で実現できるものが多く、今回は、製作が容易で、特にニーズの高い、「オーバードライブ」をテーマとしました。

以下は、その報告です。


1、概要

(1) 冒頭の通り、エフェクターとしてまず必要となる、「オーバードライブ」を製作します。
(2) アナログ電子回路であることから、手持ち・あり合わせの部品を最大限使って実現します。
(3) 上項、及び短期で製作するために、なるべく簡単な回路になるよう考慮します。


2、設計

2.1 回路

「ディストーション」や「オーバードライブ」として、公開されている製作記事をもとに、1(3)項の通り、なるべく回路を簡略化したものです。

回路図を、以下に示します。


J1 は、ステレオ用にモノプラグを挿入すると、左chがグランドにショートすることを利用して、電源スイッチとして兼用するものです。

R2・R3 は、IC1の中点バイアスと、入力信号の受けの兼用です。上記定数の場合、IC1がFET入力であれば、入力インピーダンスは R2//R3 = 500kΩ です。
今回は、中点バイアスを印加する箇所がここだけなので、上記構成にして簡略化しました。

D1~D3 は、オーディオ関連では見慣れない回路ですが、ダイオードの順方向電圧(Vf)特性を利用して、「歪み」を発生させるものです。
D2 が無ければ、「ディストーション」に分類される回路となりますが、今回は、負方向のみ、Vf の小さいゲルマニウムダイオードを追加して、「オーバードライブ」を名乗ることにしました。

※ 上記説明は、ひよこ さま のページ が詳しいので、当該ページを参照ください。

D11 は、今回二色LEDを用い、エフェクト on/off が一目で判るようにしました。
D12 は、Vz が5V程度のツェナーダイオードで、これにより、LED が点灯しなくなったら、電池交換の目安になります。


2.2 部品

オペアンプは、エフェクターにもよく使用される、FET入力「TL071」が手持ちにありましたので、迷わず使用します。

ダイオードは、2.1項の通り、一個だけゲルマニウムダイオードを使用します。さすがに持っていなかったので、本品だけは、現在でも入手可能な「1N60」を購入しました。

スイッチは、エフェクターの場合、以下のようなプッシュスイッチを使って、「足で踏む」のが本来ですが、今回この部品を入手できないのと、手持ちに2回路のトグルスイッチがありましたので、妥協して転用します。

※ 日本電産コパル社ページより転載
※ 足で操作したい方は、上記に準ずるプッシュスイッチと、次の通り、金属製ケースを使用してください。

ケースは、本来、金属製のケースを使用すべきですが、上記スイッチにより強度の心配をしなくて良くなったのと、今回は「あり合わせで作る」を旨としているので、前々回のテーマ(センサーライトVer.2) で在庫のあった、タカチ社製プラケース 「SW-85」 を転用します。

※ このケースはかなり小型で、実装に苦労しました!もっと大きい方が良いです。

他の抵抗・コンデンサ等は、すべて一般的な部品で、何れも、手持ち品や、一部古いテレビから外した中古品を再利用(!)しました。


2.3 基板レイアウト

例によって、配線の楽な、サンハヤト製「ICB-86」を使用します。
今回は、ケース寸法により、基板をカットすることを前提にレイアウトしました。
また、同様に、ボリューム及びLEDの位置も一意に決まってしまうため、先ず当該部品の位置ありき、で検討を進めました。


右上端のランド3個が、VR1 の位置となり、対面 左下端のランド三個が、VR2 に落ち着きました。
また、中央下のトランジスタのようなシンボルが、二色LEDの場所になりました。

アナログ回路なので、IC1 の入力(2ピン・3ピン)周りが最短距離になるように留意したところ、結果、中央少し上が IC1(TL071) で、上下逆(右上が1ピン)の配置となりました。

これにより、横に延びるバスパターンのうち、上が Gnd、下が VCC となりました。


3、製作

3.1 ケース加工

ケース上面に、ボリューム×2、LED×1、スイッチ×1 の穴を開けます。
側面に、ジャック×2 の穴を開けます。

今回は、スイッチとジャックの側面で、電池を支えられるような位置を選びました。

※ 穴あけ直後のケースの写真を撮り忘れました!申し訳ありません・・・


3.2 基板実装

以下の通り、ICB-86基板の上と左右をカットして、2.3項 レイアウト図に従い実装しました。


基板レイアウトに従って、部品を実装します。このとき、

・TL071 の 1・5・8pin は、半田付けせずオープンにしておく(VCC や Gnd に繋がなくて良いので、楽)
・熱に弱い 1N60 は、半田コテによるダメージを回避するため、リード線を一回程度ループさせて実装する(写真左の辺りを参照)。


3.3 予備配線

今回、部品が輻輳しますので、ケースに固定する前にできる配線は、全て済ませておきます。

なぜケースの外に配線を・・・? に見えますが、決定したケース穴を「冶具代わり」に使って、予備配線すると、本固定のときに、位置がズレることがありません。


Gnd線は、TL071の4番ピン近くから取り出して、「一点アース」に近づくように考慮します。
ボリュームと LED は、以下のような配置になりました。

※ ボリュームの裏に、半田面とショートしないように、ビニールテープを丸く切って貼っておきます。




3.4 取り付け・配線

やはりケースが小さいため、ジャックは、まず配線してから、くぐらせるように取り付けました。
信号線は、シールド線を用いるか、撚って、ノイズが乗らないようにします。



4、完成

ボリュームにツマミを取り付けて、裏フタを嵌めれば、完成です。


使い方は以下の通りです。

・入力ジャックにプラグを指すと、電源が入ります。
・左側(ゲイン)を調整すると、歪み加減を調整できます。
・上記より、音量も変化するので、右側ツマミを回して、総合的に音量を調整します。


実際にギターを繋いで音出しして貰ったところ、微妙な歪み~ハードな歪みまで、かなり広範囲な効果が得られました。
ただ、使用環境により、僅かにノイズが乗ることがありました。やはり、手持ちと予算が許せば、金属製のケースを使用したほうが良いと思いました。

最後に、本製作において、最も参考とさせて頂きました、ひよこ さま・ACTION WOMAN さま に、この場を借りまして御礼申し上げます。

2015年7月6日月曜日

エレキベース 電気系の修理


毎回、投稿間隔が開いてしまい、申訳ありません。

また、今回も予定が変わってしまいました。

久し振りにバンド活動を行う事となり、練習用に、中古で購入したエレキベース※ の電気系修理(追加?)を行いました。
その経緯を、以下に報告致します。

※ 以下、「エレキベース」は単に「ベース」、「中古で購入したエレキベース」は「中古ベース」「本ベース」と記します。


1、中古ベースの状態

地元リサイクル店で、電気系が「ピックアップと出力ジャック以外、何もついていない」中古ベースを 5,000円!で購入してきました。

何故こんな代物を!?と問われそうですが、まずは自宅用として、「サイレント練習」ができれば充分であったのと、何しろ電気系なので、手持ち部品で何とかなるのでは… という軽い気持ちで購入したのです(実際は、手持ち部品は大半、使えませんでした。3項を参照)。


2、追加回路

本ベースの裏蓋を外し、電気系統を確認したところ、

・ピックアップが、二系統
・取り付けられるポット(ボリューム)が、三個
・切り替えスイッチの取り付け穴は、無し

であったことから、ベースとして一般的な、「ジャズベース」タイプの回路を適用すれば行けそうです。
以下に、その回路を示します。



オーディオ回路として観ると、パッシブタイプのミキサーに、同じくパッシブタイプのトーンコントロール回路を追加した平易な回路です。

このタイプの回路の特徴は、ボリュームの中点(可動部接点)を、入力側にしている点です。
(もし通常のボリューム調整回路のように、中点を出力側にすると、片側を絞り込んだとき、もう片側もグランドにショートされてしまう)

さてボリューム(ポット)のカーブ仕様ですが、オーディオ回路としては「Aカーブ」が定石となっているものの、楽器の世界では、「Bカーブ」を使用する場合もあるようです。
理由は、演奏中に素早く設定を変更するニーズに、適しているものと思われます。

今回は、購入の都合で「Aカーブ」を使用します(3.1項を参照)。


3、部品

写真の通り、必要な部品を用意しました。



各部品について、以下に説明します。


3.1 ボリューム(ポット)

楽器の世界では、ボリュームの事を「ポット」(ポテンショメータの略)と呼びます。

ボリュームは、たくさん手持ちがありましたが、本ベースでは、ポットを木のボディに直付けするため、軸長が足りず、使用できませんでした…

止むを得ず、「楽器用ポット」として売られている品で、在庫のある 500kΩ Aカーブ を購入しました。
購入品は、軸長に加えて、軸の太さも、いわゆる家庭用ボリュームに対して1mmほど太く、頑丈さを考慮しているように見受けられます。

なお、このポットの軸形状が「ローレット(ミリ単位※)」であったので、この形状に合致するツマミを用意する必要があります(3.3項を参照)。

※ 電気楽器では、本場米国の影響で、「インチ単位」の部品を使用している例も、未だ相当あります。

3.2 コンデンサ

一般的なフィルムコンデンサが使用できます。
超小型の積層タイプや、耐圧が極端に小さい品(例えば25V以下)は、機械的・電気的な衝撃の恐れが多い楽器という観点から、避けたほうが良いと思います。

これは、手持ち品に100V耐圧のフィルムコンデンサがあり、使用できそうです。

3.3 ツマミ

ローレット(ミリ単位)であれば、通販で大量に購入しておいた品が使えるからラッキー! と思っていました。
しかし、いざ本ベースに当てがってみると、外径も思いのほか小さく、形状も華奢で、演奏という実使用では不安を覚えました。

結局これも、楽器用の品を、新たに購入しました。

さすがに用途品だけあって、頭頂部がラウンドしており、また、外周すべり止め(ギザ)が大きく、衝撃や頻繁の使用でも安心な構造になっています。

3.4 ジャック

これは、本ベースに付いていた品が、「スイッチクラフト社製」で、定評のある物でしたので、手入れして(4.3項参照)そのまま使用します。


4、組み立て

4.1 下準備

ポット取り付け穴の横に、ポット本体の回転防止穴をあけておきます。

「菊座ワッシャー」を挿入すれば不要ですが、本ベースでは、今回の長軸ポットでも長さが足りなかったので、次善策として本体加工することにしました。

少し分り難いですが、以下写真の通り、各ポット穴の右下側にあけました。
この状態でポットを取り付けると、配線は難しくなりますが、ポット端子の開口部が下を向き、ゴミ・木クズが入りにくくなります。




各ポットに、予備配線を施しておきます。
ベース本体に取り付けてしまってからの配線は、非常に大変なので、可能な配線は全て済ませます。



シールド線は、コールド側がほつれてショートしないように、熱収縮チューブで端末処理します。


・熱収縮チューブを15mm程度に切り、ちょうど中間に切れ込みを入れます。
・切れ込みから、シールド線の芯線側を引き出します。
・コールド側は、チューブを端まで通します。
・最後に、ドライヤーで仕上げます。


4.2 配線

ピックアップやジャック等と接続します。
微小信号を扱うパッシブ回路なので、特に以下に留意して配線します。

・ポットの筐体は、グランドに落とす。
・信号線ホット側とコールド側を近づける。できれば、撚じる。

配線状況を、以下写真に示します。



4.3 その他の処置

4.1項の処置を行い、ポット軸長を充分に確保した積もりでしたが、ツマミを奥まで押し込むと、「ベース本体と擦れる」状況となりました。
そこで、太いシールド線の外皮を使って、簡単なスペーサを作り、軸内に入れ込んで対処しました。



また、流用するジャックは、内側に若干汚れがあったため、以下のような、点火プラグのクリーナーを使って磨きました。



3、完成

ツマミ三個を挿して、裏蓋を止めれば完成です!

妥協なく作業を行った甲斐あって、雑音も少なく、使用感も快適です。




さてポットの「Aカーブ」特性ですが、今のところは、オーディオ機器と同じような感覚なので全く違和感は感じません。
今後、ライブなどの場数を踏めば、「Bカーブが良いと言うのは、こういうことなのかな…」と感じるかもしれませんが、その頃には、今回の費用は元が取れているでしょう…


ラフな使用機会の多い楽器ということで、堅牢さを重視して作業した積もりです。
「安物買いの…」にならないように、使い続けて行きたいと思います。