2011年4月26日火曜日

ケアマネジメントシステム開発 アセスメントシート調査

前回、ケアマネジメントの大まかなフローと、各フェーズで必要な文書について調べました
今回から、文書一つ一つについて調べ、同時に、システム化していく上でのポイントについて検討します
第一回目は「アセスメントシート」です

1、「アセスメントシート」とは?

「アセスメントシート」は、ケアプランを作成するにあたり、サービス利用者の介護に関する課題を分析し、洗い出すために使用される文書です

「アセスメントシート」の様式は現在特段の指定はありませんが、「課題分析標準項目」として以下が示されており、項目でみれば実質標準化されています

<基本情報に関する項目> 計9項目
・基本情報(受付、利用者等基本情報)
・生活状況
・利用者の被保険者情報
・現在利用しているサービスの状況
・障害老人の日常生活自立度
・痴呆性老人の日常生活自立度
・主訴
・認定情報
・課題分析(アセスメント)理由


<課題分析(アセスメント)に関する項目> 計14項目
・健康状態
・ADL ※

・IADL ※
・コミュニケーション能力
・社会との関わり
・排尿・排便
・褥瘡・皮膚の問題
・口腔衛生
・食事摂取
・問題行動
・介護力
・居住環境
・特別な状況


※ ADLとは、Activities of Daily Living の略で、食事・更衣・排泄・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動のことです
※ IADLとは、Instrumental Activities of Daily Living の略で、買い物・家事・金銭管理など、ADLより高次の生活機能のことです

2、様式の例

上記項目が分かりやすく反映されている「アセスメントシート」の例を以下に示します
これは、(株)インターネットインフィニティーさま が作成した様式を、「ケアマネジメントオンライン」のサイト経由で入手したものです

1ページ目:


2ページ目:


3ページ目:



3、様式について考察

この様式例では、1ページ目に主に基本情報が順に列挙され、2・3ページ目に課題分析項目が順に列挙されています
ADL・IADLは、具体的に定義され、全て選択肢で入力できるようになっています

何れも利用者固有の情報であり、直接入力と選択肢によるシンプルなデータテーブルとなっています

特に基本情報は、入力結果を「利用者マスタ」と定義できることがすぐに考えられます

他に、利用頻度が高く、マスタとして括りだしたほうがよいデータとして以下が考えられます
・担当CM(=ケアマネージャ)や受付対応者 ⇒ 「職員マスタ」
・病院名や担当医 医療機関 ⇒ 「医師マスタ」
・郵便番号・住所 ⇒ 「郵便番号マスタ」(これは広く存在するのでは?)
・緊急連絡先 ⇒ 「家族マスタ」(これは独立しなくて良い?)

また、「アセスメントシート」に限らず一人あたり相当数の入力項目があり、ニーズとしてなるべくキーボードを打たずに入力したいと聞いていますので、以下のような入力支援を検討したいと思います
・日付のカレンダー入力
・定型文入力
 ⇒ 以下例のように、キーワードを含む過去入力文を表示して選択できるもの



なお、この様式では、一部「家系図」や「疾患の部位を記述する絵」など、ビジュアルな入力項目がありますが、これをソフトウエアで実現するかは別途検討します(すいません…)

現状での考察はこのあたりまでとして、詳しくは今後の仕様決定や基本設計で検討したいと思います

4、今回のまとめ

・「アセスメントシート」の様式は任意であるが、項目はほぼ指定されている
・ほぼ全項目、直接入力と選択枝でシンプルなデータテーブル化が可
・以下をマスタとして括りだすと良いのではないか
  「利用者マスタ」・「職員マスタ」・「郵便番号マスタ」・「家族マスタ」

・以下のような入力支援機能があると親切
  日付カレンダー入力・定型文入力支援

今回はこのあたりで…
次回は「居宅サービス計画書」について調べます

2011年4月14日木曜日

ケアマネジメントシステム開発 スタート

長期システム開発のテーマとして、「ケアマネジメント」を採り上げることとしました

現状では雲を掴むような状態でもあり、まずケアマネジメントの概略を調べて、当面の目標を設定したいと思います

なおここでの調査結果は、上記の通りシステム開発を目的としていますので、データの中身より構造や処理に特化した内容となってしまうことをご了承ください

序、ケアマネジメントとは?

広義では、「福祉サービスを円滑・効果的に管理すること」となりそうですが、現在の社会保障制度では

介護保険制度で定められた福祉サービスの運用ルール

と位置付けられます

※ なお介護保険制度で対象となるのは「高齢者」であり、障害者については別制度(障害者自立支援制度)でのサポートとなるため、ここでは採り上げないこととします

現在の介護保険制度では、運用すべきサービスとして大きく以下二つが定義されています
・居宅サービス ⇒ 自宅で過ごし、訪問サービスを利用したり施設に通ってサービスを利用する
・施設サービス ⇒ 施設に長期に入居して、原則その施設のサービスを利用する

また、居宅サービスは「訪問介護」「通所介護」他15種類、施設サービスは「介護福祉施設サービス」他3種類のサービスに分類されています

今回は、「居宅サービス」に絞って調査を進めて行くこととしたいと思います
以後、「ケアマネジメント」は「居宅サービスのケアマネジメント」を指すととなりますのでご了解ください

それではまず手始めに、ケアマネジメントの大まかなフローと、各フェーズで必要な文書・記録について調べて行くととします

1、ケアマネジメントのフロー


※ 左がフローで、右は各フェーズで作成する文書・記録です
※ 色付きは、作成が必須とされる文書・記録です
※ 「介護給付費単位数サービスコード表」は、(独)福祉医療機構が提供するデータです

2、各文書の概要


3、「介護給付費等単位数サービスコード表」

先述しました居宅15サービス+施設3サービスを、時間帯や難易度でさらに約1700項目に細分化したデータテーブルです
細分化されたサービスそれぞれに、介護報酬の単価基準となる「単位」が定められており、給付額を決定する重要データであると共に、サービス提供と給付・請求処理を結びつけるインターフェースともなります

4、ここまでの考察

まずフロー面では、「居宅介護サービスを提供するプロジェクトを成功に導く」ための「PDCAモデル(Plan-Do-Check-Action)」そのものであり、マネジメントシステムとして非常に良くできていると思います
次に文書面では、殆どの文書が書式指定であり、ソフトウエアに落とし込むと共通化のメリットがより大きくなります
またデータの転記箇所が多く、これはシステム化で大きく省力化できるものと思われます
さらに給付請求処理では、サービスコードから介護保険請求額を算出する処理は手作業では困難で、システム化の効果が極めて大きいものと思われます

5、次回の予定

各文書について調べて行きたいと思います

※ 今回の調査では「ケアプランの広場」「WAM NET」(福祉医療機構ポータル)というサイトを参考・引用させて頂きました
管理者の方に御礼申上げます
また稚拙な質問にお答え頂いた、鹿児島県日置市 地域包括支援センターの担当の方に、この場を借りて御礼申上げます

今日のところは以上です