バンド活動の必需品とも言える「エフェクター」を製作します。
「エフェクター」は、一般的なアナログ電子回路で実現できるものが多く、今回は、製作が容易で、特にニーズの高い、「オーバードライブ」をテーマとしました。
以下は、その報告です。
1、概要
(1) 冒頭の通り、エフェクターとしてまず必要となる、「オーバードライブ」を製作します。
(2) アナログ電子回路であることから、手持ち・あり合わせの部品を最大限使って実現します。
(3) 上項、及び短期で製作するために、なるべく簡単な回路になるよう考慮します。
2、設計
2.1 回路
「ディストーション」や「オーバードライブ」として、公開されている製作記事をもとに、1(3)項の通り、なるべく回路を簡略化したものです。
回路図を、以下に示します。
J1 は、ステレオ用にモノプラグを挿入すると、左chがグランドにショートすることを利用して、電源スイッチとして兼用するものです。
R2・R3 は、IC1の中点バイアスと、入力信号の受けの兼用です。上記定数の場合、IC1がFET入力であれば、入力インピーダンスは R2//R3 = 500kΩ です。
今回は、中点バイアスを印加する箇所がここだけなので、上記構成にして簡略化しました。
D1~D3 は、オーディオ関連では見慣れない回路ですが、ダイオードの順方向電圧(Vf)特性を利用して、「歪み」を発生させるものです。
D2 が無ければ、「ディストーション」に分類される回路となりますが、今回は、負方向のみ、Vf の小さいゲルマニウムダイオードを追加して、「オーバードライブ」を名乗ることにしました。
※ 上記説明は、ひよこ さま のページ が詳しいので、当該ページを参照ください。
D11 は、今回二色LEDを用い、エフェクト on/off が一目で判るようにしました。
D12 は、Vz が5V程度のツェナーダイオードで、これにより、LED が点灯しなくなったら、電池交換の目安になります。
2.2 部品
オペアンプは、エフェクターにもよく使用される、FET入力「TL071」が手持ちにありましたので、迷わず使用します。
ダイオードは、2.1項の通り、一個だけゲルマニウムダイオードを使用します。さすがに持っていなかったので、本品だけは、現在でも入手可能な「1N60」を購入しました。
スイッチは、エフェクターの場合、以下のようなプッシュスイッチを使って、「足で踏む」のが本来ですが、今回この部品を入手できないのと、手持ちに2回路のトグルスイッチがありましたので、妥協して転用します。
※ 日本電産コパル社ページより転載 |
ケースは、本来、金属製のケースを使用すべきですが、上記スイッチにより強度の心配をしなくて良くなったのと、今回は「あり合わせで作る」を旨としているので、前々回のテーマ(センサーライトVer.2) で在庫のあった、タカチ社製プラケース 「SW-85」 を転用します。
※ このケースはかなり小型で、実装に苦労しました!もっと大きい方が良いです。
他の抵抗・コンデンサ等は、すべて一般的な部品で、何れも、手持ち品や、一部古いテレビから外した中古品を再利用(!)しました。
2.3 基板レイアウト
例によって、配線の楽な、サンハヤト製「ICB-86」を使用します。
今回は、ケース寸法により、基板をカットすることを前提にレイアウトしました。
また、同様に、ボリューム及びLEDの位置も一意に決まってしまうため、先ず当該部品の位置ありき、で検討を進めました。
右上端のランド3個が、VR1 の位置となり、対面 左下端のランド三個が、VR2 に落ち着きました。
また、中央下のトランジスタのようなシンボルが、二色LEDの場所になりました。
アナログ回路なので、IC1 の入力(2ピン・3ピン)周りが最短距離になるように留意したところ、結果、中央少し上が IC1(TL071) で、上下逆(右上が1ピン)の配置となりました。
これにより、横に延びるバスパターンのうち、上が Gnd、下が VCC となりました。
3、製作
3.1 ケース加工
ケース上面に、ボリューム×2、LED×1、スイッチ×1 の穴を開けます。
側面に、ジャック×2 の穴を開けます。
今回は、スイッチとジャックの側面で、電池を支えられるような位置を選びました。
※ 穴あけ直後のケースの写真を撮り忘れました!申し訳ありません・・・
3.2 基板実装
以下の通り、ICB-86基板の上と左右をカットして、2.3項 レイアウト図に従い実装しました。
基板レイアウトに従って、部品を実装します。このとき、
・TL071 の 1・5・8pin は、半田付けせずオープンにしておく(VCC や Gnd に繋がなくて良いので、楽)
・熱に弱い 1N60 は、半田コテによるダメージを回避するため、リード線を一回程度ループさせて実装する(写真左の辺りを参照)。
3.3 予備配線
今回、部品が輻輳しますので、ケースに固定する前にできる配線は、全て済ませておきます。
なぜケースの外に配線を・・・? に見えますが、決定したケース穴を「冶具代わり」に使って、予備配線すると、本固定のときに、位置がズレることがありません。
Gnd線は、TL071の4番ピン近くから取り出して、「一点アース」に近づくように考慮します。
ボリュームと LED は、以下のような配置になりました。
※ ボリュームの裏に、半田面とショートしないように、ビニールテープを丸く切って貼っておきます。
3.4 取り付け・配線
やはりケースが小さいため、ジャックは、まず配線してから、くぐらせるように取り付けました。
信号線は、シールド線を用いるか、撚って、ノイズが乗らないようにします。
4、完成
ボリュームにツマミを取り付けて、裏フタを嵌めれば、完成です。
使い方は以下の通りです。
・入力ジャックにプラグを指すと、電源が入ります。
・左側(ゲイン)を調整すると、歪み加減を調整できます。
・上記より、音量も変化するので、右側ツマミを回して、総合的に音量を調整します。
実際にギターを繋いで音出しして貰ったところ、微妙な歪み~ハードな歪みまで、かなり広範囲な効果が得られました。
ただ、使用環境により、僅かにノイズが乗ることがありました。やはり、手持ちと予算が許せば、金属製のケースを使用したほうが良いと思いました。
最後に、本製作において、最も参考とさせて頂きました、ひよこ さま・ACTION WOMAN さま に、この場を借りまして御礼申し上げます。